2019年02月23日

本の紹介「パクリの技法」

パクリの技法
パクリの技法
オーム社 藤本貴之著
ISBN 978-4-274-22338-9
「学ぶ」の語源は「真似ぶ」にあるといいます。

久しぶりに書籍のご紹介、「パクリの技法/オーム社/藤本貴之著/ISBN 978-4-274-22338-9」。
この本の中に何度も書かれている通り、「自分の知らないことは想像できない」は真理だと思います。何か物を創るときには、必ずベースになる「何か」がある。つまり全くパクリのない創作はあり得ない、ということですね。
しかし、世の中には称賛されるパクリがある一方で、叩かれて道を断たれるパクリエイターもいます。
その違いは何か? どんなパクリは許されて、どんなパクリは嫌われるのか、そういったことが書かれています。決して「楽してパクって儲けよう」という指南書ではなく、明暗の実例も交えつつ「明るい創造(?)」に必要なことが書かれており、ものづくりやデザインに関わる人は読めば為になると思います。


さて、本題からはちょっとずれるのですが、僕はホリエモンと「全く合わない」と常々感じています。
嫌いな訳ではないんですよ。もっともなことも沢山いってますし。
ただ「合わない」んです。

一番「合わない」と感じたのは、「職人に修行なんて必要ない、寿司なんか学校を出れば作れる」みたいな話をしていたときですね。
本当にそうなのか? と疑問を感じた訳ですけれども、明確に「ここが違う」という指摘もできませんでした。
が、この本の中に書かれていました。

---以下引用---
言語化された知識として学ぶものを「形式知」といいます。形式知をひと言でいってしまえば、文章や図表、数式などで客観的に言語化して表現できるような知識です。-(中略)-言語化して形式的に表現できない類の知識も存在しています。その中には意識化されることすらなく、私たちが自然と学び、理解し、身につけているような知識もあります。「空気を読む」などはそれにあてはまる典型的な日本人が身につけている特有の知識かも知れません。このような知識を「暗黙知」といいます。
---引用終わり---

多分これなんですよ。
学校に行って学ぶ、説明を受けて学ぶ。それ以外の「体得する」というのは、実務経験でのみ身に着きます。僕なんかの分野の職人仕事でも同じですね。手首の動かし方、リュータの回転速度の変え方、そういったことは、文章や図で説明しろといっても100%は無理なんですよ。
修行とは辛い思いをすることではありません。
実際に経験して体得し、「暗黙知」を身に着けることが目的なのです。そして恐らく、どんな仕事でも形式知と同じかそれ以上に暗黙知が大切です。
ホリエモンの「学校出ればできる」というのは、これをまるで無視してるんです。
勿論彼には彼の経験があって、その上でいっているのだとは思いますが、この件に関しては自分は全く同意できない。多分これが「合わない」原因ですね。


もう一つ気付いたことがあります。
仕事をする際に、「同じ仕事を複数人でする」重要性ですね。
特に、先輩と後輩を組ませて同じ仕事を担当させる。
こうすることで、先輩の仕事の様子から、後輩は自然と「暗黙知」を得ることができます。

実際に、僕の知っているところで「人員の効率化」を突き詰めているところがあり、そこでは全ての業務の計画時間から細かく担当や時間を割り振っています。それこそ分単位で、全社員に、です。
必然的に「計算上」工数が足りる業務は一人にしか担当させません。しかしそのせいで、その業務についてはその人以外に分かる人は皆無、という状況が生まれますし、退職などで担当を変えることになった時に、「引継ぎ」「マニュアル」といった、上記の「形式知」については何とかなったとしても、「暗黙知」をそんな事務的に伝えることなど到底できません。結局、前任者がいなくなってから、分からないことやトラブルが多発することになります。
「一つの仕事を一人で担当する」のと「二つの仕事を二人で担当する」のでは、数値計算上は等価であっても、実務上は全く等価にならないのです。
posted by 荒井技巧 at 20:43| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

もう一つ嬉しかったこと

宝飾の専門学校時代の後輩が(今となっては後輩とはいえませんが…組み立てや細工は彼の方が絶対に上手い)、とあるブランドの仕事を請け始めたのですが、先方の制作関係の方がうち(荒井技巧)をご存じだったそうです。
僕自身以前から気にはなっていたブランドだったので、なんとも嬉しい話です!
posted by 荒井技巧 at 00:08| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

骨折の不便と嬉しかったこと

先日、骨折で「ワクワクしている」とか書きましたけれども、現実には仕事関係で多くの人にご迷惑をお掛けしている訳でして、大変申し訳ございません。
動かないのは左手首だけ、なのですが、実際には様々な不便があることが分かりました。
たとえば、

*ものが拾えない。
下に落ちたものを拾おうとしても、中指だけが先にぶつかってつっかえ棒になってしまい、親指が届かないんですね…。そうするとものが掴めない。自分の左側に落としたものを拾う為に一旦椅子を下げて右手て拾って、と大変手間が掛かります。
*彫刻台の向きを変え難い。
普段は彫刻台を回したり傾けたりするのに左手を使います。しかし、左手に力を掛けることができない為、右手に持っている道具を一旦置いて右手で向きを変え、再度道具を持ち直す、とこれまた手間が掛かります。
*動きに機敏さがなくなる。
何をするにも無意識に左手首をかばう為、どんな動作をするのであっても、どうにも鈍くなってしまいます。

結局、同じ仕事をするのに普段よりもえらく長い時間が必要になってしまう訳です。
骨折、実体験として勉強にはなりましたけれども、良いことは何もありませんでした。


そんな中、取引先の方からとあるメッセージを戴きました。
急ぎの仕事を(うちではなく)別なところに頼んだら、丁寧さが全く違う、納期を長めに取るからやってほしい、と。
迷惑を掛けていながらこんなこといっちゃいけないのは分かってますけど、これは本当に嬉しいですよ。
単に「石を留める」という作業的な面だけではなく、仕上がりで選んで頂ける様になるというのは、ずっと目指してきたことですから。

早く治して、迷惑を掛けた分はしっかりと仕事でお返し致します!
今月末にはギプスを外せる予定です。
posted by 荒井技巧 at 00:07| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年02月11日

流れに乗る

人生の中で「流れ」ってあると思うんですね。
そして、流れに逆らうことはできるけれども、それにはものすごくエネルギーを必要とする。よほど嫌なのでなければ、流れに乗ってしまった方が良い。

たとえば僕は、そもそも自営で仕事をする気など全くありませんでした。親父からも「大変だから自営だけは絶対にやるな」と釘を刺されていましたし(笑)
それがなんでこんなことをしているかといえば、「流れ」なんです。
前の仕事を辞める時には転職を考えていました。しかし、諸々提示された条件が決して悪いものではない一方で、転職が上手くいく保証がある訳でもない為、個人事業主として以前の勤め先の下請けをしつつ、仕事を広げていくことにした訳です。
決断をしたのは自分ですが、それは流れに乗る決断をした、ともいえるでしょう。

そして今。
Instagramでフォローしたのが、たまたま専門学校の後輩(というかほとんど同期ですが)で、そこでの再会後しばらくはネットでのやりとりだけでした。
その後、たまたま彼の地元に行く用があった際に、ほぼ10年ぶり位で会い、少し仕事をやりとりする関係になりました。その後自分の請けている仕事が捌き切れなくなってきたので、彼の得意分野は直接丸々請け負ってもらうことになりました。その仕事は、彼の仕事の後にこちらに来たり、或いはこちらで加工したものを彼に引き継いだりと、仕事内容を棲み分けて上手く回っている様に思います。

そして先日の怪我。
幾つも抱えていた仕事の仕上げ部分を彼に丸々やってもらいました。
今の状況は、これまでの彼との仕事がなければ、多分解決できていなかったでしょう。
全て流れに乗ってきた結果です。

やりたいことがある。
それは良いことだと思います。
でも、自分を取り巻く流れを見て、それに乗ることもとても大切なのです。
ときには「自分のやりたいこと」を後回しにする決断ができるかどうか。
大きな流れに乗ってしまった方が、場合によっては早く目的地に辿り着けるのです。
※もちろん「こんな筈じゃなかった」もあり得ますが(笑)
posted by 荒井技巧 at 20:12| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年02月06日

人生初の骨折

骨折!
手首が動かせない…
骨折しました…

先週の金曜日、御徒町で転倒して左手首をアスファルトに強打しました。
打撲か捻挫程度だと思いましたが、手首が全く動かせない。
翌日近所の整形外科で診てもらったところ、先生から「残念ながら骨折です、全治一か月」と無情な一言…。

骨折!
人生初!
あと数年で五十路だってのに、この歳になっても「生まれて初めて」ってあるんだな!

って喜んでる場合じゃないんですよ。
とにかく痛くて力は入らないし、道具も持てない。仕事にならない訳です。

まぁ、結局三日目から仕事はしてるのですけれども、たとえば頻度の高い作業としては、ピンバイスが交換できない。掴んで力を入れられないので、回せないのです。
仕方がない、歯の出番…。その内歯も欠く様な気がする…。


さて、腕でも脚でも骨折すると「吊る」ことが多いですが、これは患部が下になって血が澱まない様にするのが本来の目的な訳ですけれども、もう一つ重要な意味が体験して分かりました。

ギプス、すごい重い。

腕が筋肉痛ですよ。


そんなこんなで、周りに迷惑を掛けまくりではあるのですが、その一方で「今まで経験したことのないこと」に、心のどこかでワクワクしている自分に気が付きます。
自分が「非常に危険なタイプ」だという自覚はしております、ハイ…。
posted by 荒井技巧 at 00:31| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年01月09日

赤い珠を抱え込んだウロボロスのペンダント

ウロボロスのペンダント
お客様に大変お待ち頂いたオーダー品、「ウロボロスのペンダントトップ」です。

お客様のご要望は2つ。
1)ウロボロスが珠を抱え込むペンダントトップ。
2)珠は赤系の天然石。

まずは石探しから始めましたが、形状的に「どうやって留めるか」も考えながら探さなくてはなりません。結果的に「天然石ビーズ」をある方法で留めました。接着ではありません。

さてその天然石ビーズ、とても色の綺麗な「ヘソナイトガーネット」です。
そして、お待ち頂いたお詫びに、眼にはダイヤモンドメレを留めました。

原型は、久しぶりにハードワックスの削り出しで、型は取っていませんので、完全な一点ものです。
お客様はこのデザインを10年以上探していて見付からなかったそうで、結果的に私がオーダー品として制作を請け負った訳ですけれども、お届け後に大変喜んで頂けた旨メールを戴きました。嬉しい限りです。
N様、どうもありがとうございます。



ラフ画
さて今回の制作、実はデザイン自体が当初明確にはなっていませんでした。
そこで何パターンかスケッチを描き、絞り込みました。

CADでより明確化
元々CAD/CAMを用いる予定はありませんでしたけれども、立体にした際のうねり具合や全体の大きさのバランスを考える為、CADでラフデータを起こしました。これで色々な向きから見られます。

ワックス原型
最終的には紫ワックスの手削りで原型を起こしました。バチカンは板を曲げています。
posted by 荒井技巧 at 00:28| Comment(0) | TrackBack(0) | ジュエリー 創作

2019年01月04日

「風の谷のナウシカ」とカブトガニ

― その者 蒼き衣を纏いて 金色の野に降り立つべし

今日TVで「風の谷のナウシカ」を放送してましたね。僕が中学生の時ですから、今から35年位前の作品です(調べたら1984年公開だそうです)。
今見ても古臭さを感じない、名作だと思います。

さてその作中、姫様が囮にされた子供の王蟲を救う場面で、赤い服を着ていたのが、王蟲の群れの前に降ろされるときには青い服になっています。これは傷付いた王蟲から流れ出る体液に染まったもの、という解釈で良いのだと思いますが、そこではたと気付きました。
もしかしたら宮崎駿監督は、「カブトガニの血液」の話を見聞きしたのではないかと。

カブトガニの血液は青い。
それは細菌汚染の検査に使う為に採取され、採血過程で30%のカブトガニが命を落とすそうです。
(現在では代替品の開発が進み、カブトガニからの採血は段階的に廃止されるとのことです)

王蟲は外観的にグソクムシ等の節足動物がモチーフだと思いますが、カブトガニもその仲間です。
細かくいえば
グソクムシ…節足動物門 甲殻亜門 軟甲網 等脚目
カブトガニ…節足動物門 鋏角亜門 節口網 カブトガニ目
と全然違うのですが、まぁ学者でもなければそこまでは追及しないでしょう。

で、もしかしたら「カブトガニの血液は青い→王蟲の血液(体液)も青い」と考えたのではないかと思ったのですね。

聞いた訳ではありませんから、あくまでも僕の妄想ではありますが…


カブトガニの血液が青いのは、ヘモグロビンに含まれる鉄の代わりに銅を利用している為だそうです。
posted by 荒井技巧 at 23:59| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2019年01月01日

明けましておめでとうございます。

猪目

明けましておめでとうございます。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。

中村八幡宮
大吉
初詣
今日は久しぶりにゆっくりと。
地元の中村八幡さんに初詣に行ってまいりました。
扇子おみくじは大吉。皆様にお裾分けです(笑)


さて、「猪とハート?」と疑問に思われた方も多いでしょう。
ここで【まめちしき】です。

ハートの形は、日本では昔から「猪目(いのめ)」という名前で用いられてきました。
ネットで調べると「猪の目の形がハートだから」という記述が多数見られますが、どうやらそれは誤りの様です。
由来は、「懸魚(けぎょ)」と呼ばれる、屋根の両端につける破風板の一部の飾り板にあります。種類にもよりますが、その一部に「ハート型の彫文様」があり、懸魚全体の逆三角形を「正面から見たイノシシの顔」に見立てたときに、このハート形が眼の位置にある為に「猪目」と呼ばれる様になったそうです。
posted by 荒井技巧 at 16:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年12月30日

2018年、暮れ。

本年もありがとうございます

大変久しぶりの更新です。

11月の初めから強烈な頭痛に苦しめられておりました。
夜寝ていて、「頭が痛く」て目が覚めるのですよ…こんなことは今迄にありませんでした。
頭痛に加えて眼の奥の痛みと見え具合の違和感、肩甲骨内側の痛み…と、これ全て左側だけ。場所が場所だけにCTとMRIを撮り、結果的に脳腫瘍等がないことが分かったのは幸いでした。原因は、頚椎の間から神経の束が出ているのですけれども、そこが狭くて神経を圧迫し、炎症を起こしていることでした。
神経ブロック注射という、以前腰を痛めた際にも使った強い薬を注射し、12月後半からはある程度落ち着いてきました。
しかし、首の横から頚椎の直近まで針を刺す訳で、しかも「痛みの根幹がここ!」という様なところをグリグリされるのですから、度々やりたいものではありませんです、ハイ…。

さて、あと一日で2018年も幕を下ろします。
本年も大変にありがとうございます。
独立した直後は「果たして仕事を出してもらえるのだろうか」という不安で一杯だった訳ですけれども、幸いなことに仕上がりをお待ち頂く位に仕事が来る様になりました。感謝しかありません。
来年はもう少し自分の制作時間を確保したいところではありますが、お客様あってのお仕事ですから、ご依頼頂く仕事には引き続き精いっぱい取り組みたいと思いますので、どうぞ宜しくお願い致します。
posted by 荒井技巧 at 20:04| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年10月19日

πとeのピアス、数学史上最も美しい等式

πとeのピアス
正面から見るとπ、向きを変えるとe。
全く別に定義された、円周率のπ、ネイピア数(自然対数の底)e、虚数単位i。
これらが、オイラーの等式「e^iπ=-1」で結び付けられました。
「数学史上最も美しい等式」と呼ばれます。

この内のπとeを一つのピアスにしてみました。
正面から見るとπ、向きを変えるとe。形も綺麗にまとまりましたね。
現在実作を進めています。

尚、一回り大きくしたペンダントトップも並行して進めていますが、こちらはバチカンのデザインが虚数単位のiです。
posted by 荒井技巧 at 12:47| Comment(0) | TrackBack(0) | ジュエリー 創作