2018年10月19日

πとeのピアス、数学史上最も美しい等式

πとeのピアス
正面から見るとπ、向きを変えるとe。
全く別に定義された、円周率のπ、ネイピア数(自然対数の底)e、虚数単位i。
これらが、オイラーの等式「e^iπ=-1」で結び付けられました。
「数学史上最も美しい等式」と呼ばれます。

この内のπとeを一つのピアスにしてみました。
正面から見るとπ、向きを変えるとe。形も綺麗にまとまりましたね。
現在実作を進めています。

尚、一回り大きくしたペンダントトップも並行して進めていますが、こちらはバチカンのデザインが虚数単位のiです。
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ドラバイトはコーヒーの色

ドラバイトの指環
ドラバイトはコーヒーの色
先日のゴム型を用いたSV枠を使って、ドラバイトの指環を創ってみました。
ウラングラスの指環のアレンジで、一回り小さいオーバルに対応した4本爪の指環です。この枠も、サイドビューがばっちり見えますよ。

ドラバイトとは聞き慣れない名前ですが、褐色のトルマリンです。褐色で透明度が低かったり照りが悪かったりすると、どうにも冴えない感じになってしまいますが、このルースは透明度が高く、とても澄んだ褐色です。

誰かがブログで「コーヒーの色」と例えていましたが、まさに深煎りではないコーヒーの感じですね。
日々コーヒーが欠かせない僕にとっては、とても親近感のある指環になりました。

※現品販売可です。お問い合わせください。
posted by 荒井技巧 at 12:33| Comment(0) | TrackBack(0) | ジュエリー 創作

2018年08月29日

樹脂型とゴム型、鋳造品

樹脂型とゴム型、鋳造品
樹脂型とゴム型、鋳造品
少し前に「樹脂型から直接焼きゴム型を取る」という記事を掲載しました。
これについては「この単純な形だからできたんでしょう、これで『取れる』と断言はできないよ」という声を戴きまして、確かに自分でもそうだと考えていました。

そこで今回「さすがにこの形は無理だろうという」形で試してみました。
無理だろうという理由は主に、
1)間隔の開いた細い腕で成り立っている。
2)先端補強のない爪がある。
です。
まぁ、これでゴム型が取れればそこそこ色々な形に対応できるかな、と。
とはいえ、そういう形ですから期待半分、捨て半分といったところでしたが…

造型出力樹脂から直接の焼きゴム型、取れちゃいました。
最近の造型樹脂はすごいなあ。
この樹脂、鋳造可能樹脂とも通常の模型用樹脂とも異なる「高強度樹脂」で、一応「ゴム型が取れる」という触れ込みではあったのですが、こういうものは実際に試してみないことには何ともいえませんので。

因みに以前から「通常の樹脂造型出力」の型を取る為の「低温焼成シリコンゴム」は存在していました。これは「温度を上げると軟化して変形し易くなる造型樹脂の型を取る為に、100℃以下の低温で焼成できるシリコンゴム」です。
しかし、今回はその使用を指定していません。通常の地金原型の型を取る為のゴムです。

さて、今まで樹脂型からゴム型を取りたければ、液ゴムを使わざるを得ませんでした。この液ゴム、かなり硬く劣化が早いという話を聞きます。これについては今一つ実感がないのですけれども、それよりも「硬化に時間が掛かる為、焼きゴムに比べて納期が長い」ことと、「価格が高い」ことがネックでした。価格は通常のシリコンゴムの倍位します。
ですから、液ゴムを使わなくても良いというのは大変にありがたい。

今後も活用していきたいと思います。
posted by 荒井技巧 at 00:34| Comment(0) | TrackBack(0) | ジュエリー CAD

2018年08月23日

角石の覆輪留

タガネで内側を削いでいるところ
石座の完成
石を座らせたところ
覆輪を倒したところ
覆輪を整形したところ
角石の覆輪留
角石の覆輪留です。

お付き合いのある作家さん、業者さんはご存知の通り、僕はいつも「キャスト上がりで石が座ってしまう石座では駄目」と口うるさくいっています。

石が座ってしまうということは、微調整前から覆輪に余裕があるということで、石留前の仕上げをしたらもっと余裕ができてしまいます。更に石座を整えたら、もっともっと余裕ができてしまいます。
余裕となってしまった部分は、離れたところから覆輪を寄せなくてはならず、つまりは必要以上の寸法の覆輪になってしまいます。
もちろんデザインとして覆輪を広く見せるというのもありましょうから、100%それではいけない、ということではないのですけれども。

僕の考える理想の石座は、石留前に「石が上に乗る程度」の状態です。
しかし角石の座となると、調整にカッターバーの様な回転工具は使えません。直線も角も出せない為です。
そこでどうするかというと、タガネで内側を僅かずつ削ぎ取って、場面寸法、深さ、傾き全て石に合わせ込みます。手間は掛かりますが、これが一番綺麗にできます。
更に、その下の貫通穴の壁の鋳肌も同様に削ぎ取ります。

写真は上から順に、
1)タガネで内側を削いでいるところ…大工さんの「ノミと金槌」と同じ要領で、「垂直」に彫り込みます。
2)石座の完成…内側もバリを残したままでは綺麗ではありませんので、整えます。
3)石を座らせたところ…この状態でほとんど隙間がなく石が収まっているのが分かると思います。
4)覆輪を倒したところ…「石を傷付けない」様に「石を動かない様にする」ことが目的ですから、打つ力の強弱が出ます。ここで打って整えようとすると石を割ることになります。
5)覆輪を整形したところ…ヤスリできちんと整形すると、ここまですっきりします。

posted by 荒井技巧 at 18:47| Comment(0) | TrackBack(0) | 制作の周辺

2018年07月31日

さようなら、アイコ(追記あり)


さようなら、アイコ
さようなら、アイコ
今年の夏は暑過ぎる。

庭のアイコが、暑さにやられて枯れてしまいました…
東日本震災のあった年から毎年夏にはトマトを植えていますが、こんなことは初めてです。
最初は勢い良く育ってくれてたのに。

枯れてしまったので、付いている小さく青い実はこれ以上育ちません。

なので、ピクルスを作って戴きましょう…

さようなら、アイコ。
そして、また来年!続きを読む
posted by 荒井技巧 at 18:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

思いがけないところで役立った蔵書

五體字鑑
五體字鑑
五體字鑑
先日某SNSに「明日の仕事やりたくない〜」と泣き言を書きました。

加工そのものが嫌な訳ではなく、極端に難易度の高い加工ということでもなく。
何故か。

「形見の印台の印面修復」

重い。重過ぎる…


私のところに来たのはお店経由ですけれども、お客様は形見の印台を「印」として使える様にしたい、とのことらしいのです。
預かった現品を見ると、見事に印面が潰れて文字が殆ど形を成していません。
お店からは「多分『行書』が近いと思う」といわれていましたが、とりあえずは現状把握ということで捺してみました。

…どうも行書っぽくない。
名前には「澤」の字が使われていましたが、行書とは全く形が違って見えるのです。
ということは、行書で修復してしまったら、お客様にとっては全く「修復」になりませんね。困りました。

そこではたと、「もしかして崩し字?」と思い、蔵書の一つ「五體字鑑」を見てみると、見事印面の形と一致する「澤」の形がありました!


僕はお世辞にも字が上手いとはいえませんが、グラフィックの一つとして「書」って好きなんですよ。なので、古本とかでこういった本を見付けるとつい買ってしまいます。
それが思いがけぬところで役に立ちました。

お客様自身も、もしかすると潰れた印面しか見ておらず、「澤」の形と全然違う印面で渡されたら訝しむかと思い、「お客様にお渡しください」と該当ページのコピーを取ってお店の方に渡したところ、「よくこんな資料持ってたね!」と大笑いしながら喜んで頂けました。
良い方向に期待を裏切る、この瞬間がたまらない(笑)
posted by 荒井技巧 at 01:13| Comment(0) | TrackBack(0) | 制作の周辺

2018年07月01日

造型樹脂、直接の焼きゴム型取り

樹脂からの焼きゴム型で制作
樹脂からの焼きゴム型で制作
造型樹脂のお話です。

今うちでは主に2種類の造型樹脂を用いています。
一つは直接鋳造可能なもの。これは以前制作記事を掲載しました。
そして今一つは、高強度高精細な樹脂で、触れ込みでは「焼きゴム型を取れる」ことになっています。

ピンとこない方もいらっしゃると思うので少し説明をしておくと、ジュエリーを作る際に使うゴム型には「液ゴム」と「焼きゴム」があります。
液ゴムは液状のシリコンゴムを常温で固めて作るもので、熱ストレスは発生しません。但し、硬化に時間が掛かる為、型取りに時間が掛かり、また「耐久性が低い」「耐用期間が短い」といわれています。
一方の焼きゴムは、型取りの際にシリコンゴムを高温にして硬化させます。その際には100℃を超える為(100℃以下で固まるシリコンゴムもあることはある)、これまで私の知っている造型樹脂で、その熱ストレスに耐えられるものはありませんでした。シリコンゴムを焼成している間に樹脂が熱で軟らかくなり、変形してしまうのです。つまり、取れた型は原型を留めていない為、型として機能しません。

今回初めて、この高強度樹脂を用いて、直接の焼きゴム型取りを試してみました。
試したのは至ってシンプルな平打ちですが、綺麗に型を取ることができ、写真の通りそこから作った鋳造品にも異常はありません。
寸法の変化、これについては業者毎の鋳造条件も影響しますので一概にはいえませんが、リングサイズ、幅、厚みとも凡そ常識的な範囲でしたから、少なくともこういったシンプルな形状については、樹脂型を直接原型として利用できることになります。

これで何が良いかといえば、地金原型制作の時間を省ける、という点です。
僕はご存知の通り彫金をしますので、「〇mm幅、△mm厚で□の模様を彫ったマリッジリングが欲しい」といった注文を受けることがあります。しかし、あらゆる寸法の原型を持っている訳ではありませんから、新規型になりますと原型から作らないとなりません。そうすると納期がきつくなってくる訳で、その分短縮できるとかなり助かるのです。

中石座の様な、長い爪の付いた形ではどうか?
脇石座の様な、細い爪の付いた形ではどうか?
まだまだ色々と試さないとなりませんが、新しい制作手法の一つとして、活用していきたいと考えています。
posted by 荒井技巧 at 01:41| Comment(0) | TrackBack(0) | ジュエリー CAD

2018年05月28日

ミルグレインのお話


卒業制作
SV950 ターコイズ、ペリドット
総合制作
SV950 ストーンカメオ、シトリン、ペリドット
やりたくない仕事の一つ、それがミルグレイン。
やりたくないというよりも、「始めたくない」という方が合っているかも。
なぜならば、それが「果てしなく」感じるから…


上の写真は、もう10年以上前の卒業制作。チェーン以外、一面ミルグレイン。くるくると巻いた地金にミルグレインを施し、それぞれの天辺に粒金を載せています。
下の写真は、さらに前の年の総合制作課題、やっぱりミルグレイン。実は卒業制作の前振りとして作ったもの。

これだけやってて「やりたくない」もないものだけれども(笑)


彫金のテキストを見ると、ミルグレインは「ミルタガネ」というものを作って、それを連続して打っていく、と書かれています。これらの制作では、その方法を用いました。他に手掛かりもないですし。
しかし、これが通用するのは「軟らかい地金」に「小さい粒」を作るときだけ、なのです。

昨今ではミルグレインの粒がどんどん大きくなっており、小さいものはあまり好まれません。これは某結婚雑誌に載るブライダルジュエリーのミルグレインがどんどん大きくなり、そういう方が人の目に触れる機会が増えた結果、それが「当たり前」になってきたのではないかと思っているのですが、とにかく加工する方は大変です。

硬い地金に大きな粒を作ろうとして、大きいミルタガネを作って打っても、まず綺麗な粒にはなりません。当たる面が大きいと刃先が食い込まないからです。せいぜい刻み跡が入る位です。ロレットなんてもっと浅くしか入りません。
つまり、従来の方法では「綺麗な艶のある球形」にはできないのです。


現在僕は、ミルグレインの加工には、指環であれば5つの工程を費やしています。
1)枠切り
2)印付け
3)刻み
4)打ち込み
5)丸め
これらは全て別の作業で、上で書いた方法と比較すると、とんでもない工数を掛けています。でも、綺麗な粒にする為に試行錯誤した結果がこうなのですから、どうしようもありません。特に5)の丸めは、一粒一粒きちんと丸めていきます。作業を始めたら、肘から先以外はほとんど動かさない状態が延々と続きます。冒頭で「果てしなく」と書いたのも、お分かり頂けるかと思います。
因みにこの内のひと工程は割と最近追加したものです。自分でどんどん手間を増やしてるんですよ(笑)


工賃仕事をする身としては、できるだけ端折って手っ取り早く終わらせたいところですが、僕のお客様は「ざっと仕上げた仕事」を求めてない。しかも目の肥えた方が多く、小手先のごまかしは利きません。手を抜いたらすぐにばれて、お客様は去って行くでしょう。
それに何より、品質を無視した効率優先の仕事はしたくない。
自信を持って「ルーペで見てください」といえる仕事じゃなければ、やりたくないし、やる意味がないんです。それこそ御徒町のどこか探せば、もっと安く頼めるところが見付かる筈です。
選ばれる理由を見失う訳にはいきません。


そんな訳で、とにかくやりたくなくて、でもやるならとことん手は抜かん!、なミルグレインなのです。
posted by 荒井技巧 at 01:26| Comment(0) | TrackBack(0) | 制作の周辺

2018年05月07日

「あなたにファンはいるのか?」

よく「ブランドやショップの『ファン』を作りなさい」などといわれますけれども、それ以前に「あなた自身にファンはいるのか?」「あなたは自分のファンを作る努力をしているのか?」というテーマがある様に思います。

確かに商品やサービスに直接的に「あなた」は関与しないかも知れませんが、それを開発したり、販売したりするには、少なからずの人の協力が欠かせません。
そして、その人の「ファン」じゃなければ本当の意味で協力なんかしないんですよね。いい方は悪いですが、カネの範囲でそれなりに、というのが現実。
誰かの力を借りたければ、自分のファンになってもらわなければだめだと思うんです。

周りみんなに媚びる必要はないし、100人が100人に気に入ってもらうことは不可能です。
でも逆に、100人が100人に嫌われる様な人は実際に存在して、そういう人には誰も力を貸しません。
そうなると、やはり良い仕事はできないですよ。大概、本人は気付いていないですけどね…

「誰かに嫌われる」のは構わない。
「誰からも嫌われる」は、やはりだめだ。
posted by 荒井技巧 at 10:17| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

2018年04月28日

CADから実体へ ウラングラスの指環

CADから実体へ ウラングラスの指環

CADから実体へ

CADから実体へ。
試作品としての、ウラングラスの指環です。

画像は左から順に、CADのパース表示、レンダリング、樹脂造型出力、そして完成試作品です。

ウラングラスの指環
ウラングラスの指環
パビリオンも大きく見えています
紫外線で強く蛍光します width=
ウラングラスの指環
元々このデザインは、以前購入した水晶を使う為に創ったもので、
1)石座を極力小さくすること。
2)一方で、石をしっかりとホールドできること。
3)石を高く持ち上げて全体を見せること。
4)しかしキュレットが指にぶつかる構造でないこと。
を条件に、
5)腕も石座も流れる様なラインであること。
6)平面的、パーツの寄せ集め的ではなく、三次元的な形状であること。
を目指しました。

その上で更に、ものづくりとして
7)直接鋳造をし、仕上げること。
を試しました。

実は以前、取引先で「サンプルに作ってもらった樹脂造型の鋳造は全然ダメだった、使い物にならない」という話を聞いていましたし、他にも樹脂鋳造で失敗したという話はあちこちで聞きます。そういったトラブルが多いせいか、鋳造業者によっては「樹脂造型の鋳造は請けない」と門前払いをされてしまうこともある程なのです。
今回はSV925の鋳造で2箇所の協力を取り付けました。
SV925で鋳造できれば、一点ものの制作だけではなく、地金原型を作る際にも積極的に利用できるということです。

できてきた鋳造品は悪い状態ではありませんでしたので、そのまま光沢仕上げにしました。
最終的にはゴールド系の地金に水晶を留める予定ですが、テストピースとしてウラングラスを留めてみましたよ。

流れる様なラインの中に高く持ち上げられた石、パビリオン側も大きく見え、それでいてキュレットはぶつからない。
ほぼ目標は達成できました。


ウラングラスは天然の鉱物ではありません。
名前の通り「ウラン」が添加された「ガラス」です。
一番下の写真の様に、紫外線を当てると鮮烈な蛍光を発します。とても綺麗な黄緑色です。

製造は1830年代から始まり、食器や花器などに多く使われました。アメリカでは鉄道車両の灯火にも利用されたそうです。
しかし、1940年代にウランが原子力に利用されるようになると、ウランを材料として扱うことが困難となり、今ではほとんど作られていません。
それでは何故この様なカットルースが存在するのかというと、破損したアンティーク品などからリカットしているのです。

気になる放射線の影響は、「ほとんどない」ということです。
根拠は「必須ミネラルのカリウムに含まれる同位体、カリウム40の体内備蓄量から放射される内部被爆と同程度」にあります。
ですから、怖くて触れない、という様なものではありません。ご安心を。


6)平面的、パーツの寄せ集め的ではなく、三次元的な形状であること。
について、少し説明しましょう。
「CADで作ったデザイン」には、平面的、パーツの寄せ集め的なものが多いです。
それは、そうすると作るのが簡単だからです。
平面図形を立ち上げただけ、プリセットされている石座を並べただけ、ソリッド図形を組み合わせただけ、といった具合で、確かにその様な作りをすれば「誰でも簡単」ですね。

でも、僕はそういうものは創りたくない。
「CADで創っているっぽいけど、どうやってデータを作っているのかが分からない」というのを目指したいですね。
posted by 荒井技巧 at 00:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ジュエリー CAD